『栄養 Trends of Nutrition』抄録ライブラリ

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栄養 Vol.36 No.2

「免疫と栄養」

  • 森田直樹
  • 竹田潔
  • 新開省二
  • 川島忠臣
  • 下条直樹
  • 橋詰直樹
  • 田中芳明

乳酸菌および乳酸菌由来代謝産物による腸管免疫制御の新知見

森田 直樹
東京大学定量生命科学研究所 免疫感染制御研究分野
竹田 潔
大阪大学大学院医学系研究科・免疫制御学講座
私たちの腸管管腔中には10 兆を超える細菌が腸内細菌叢と呼ばれるコミュニティーを作り、私たちと共生している。これまで腸内細菌は食事由来の食物繊維を分解することで産生される短鎖脂肪酸の産生を介して宿主のエネルギー源を補助的に供給することが主要な役割だと考えられてきた。しかしながら、近年の研究からこれら腸内細菌が私たちの生態恒常性維持に重要な役割を持つことが明らかになり始めた1)。共生している腸内細菌に加えて、私たちは古くから健康に良いと考えられる乳酸菌を含む食事を摂取する食習慣が文化圏を問わず未だ存在している。近年の研究でこれら乳酸菌がどのような分子メカニズムで私たちの健康に寄与しているかも明らかとなりつつある。食事由来の乳酸菌のみならず管腔内には多くの乳酸菌が共生しており、これらも私たちの健康維持に重要な役割を担うことが示唆されている。本稿では筆者らが明らかにした乳酸菌由来の乳酸およびピルビン酸を介した腸管恒常性の維持機構に加えて、近年の腸管免疫領域における乳酸菌および乳酸菌由来代謝産物の新たな知見に関して概説する。
  • 乳酸菌
  • 腸内細菌
  • 粘膜免疫

乳酸菌B240と粘膜免疫

新開 省二
女子栄養大学教授(前東京都健康長寿医療センター研究所副所長)
ヒトにとっての外来抗原は、主に食事や呼吸に伴って体に入り、消化管や呼吸器の粘膜面を介して体内に侵入することから、粘膜が持つ免疫機能(これを粘膜免疫と称す)を適切に保持・強化することは、生体防御の観点から重要である。粘膜免疫の構成要素には、粘膜の絨毛運動、ムチンなどの粘液物質もあるが、最も重要なのは分泌型IgA(SIgA)抗体と考えられている。粘膜のSIgA 抗体は感染防御や抗アレルギーに大きく寄与する生体防御因子ということができる。大塚製薬(株)では、すでに150 株の乳酸菌の中からin vitro スクリーニングによってSIgA 抗体産生誘導能が最も高いLactiplantibacillus pentosus ONRICb0240(乳酸菌B240)を特定していた。筆者は、大塚製薬(株)から乳酸菌B240を用いたヒト試験(共同研究)の依頼があり、二つの臨床試験を主導した。その結果、乳酸菌B240を継続摂取することにより、ヒト唾液中のSIgA 抗体分泌能が高まること、さらに風邪罹患に対する予防効果が見られることを明らかにした。本稿ではその二つの臨床試験を詳しく紹介するとともに、乳酸菌B240が粘膜免疫を強化するメカニズムについて考察する。
  • 乳酸菌B240
  • 粘膜免疫
  • 分泌型IgA抗体
  • 風邪予防
  • ムチン

乳酸菌Pediococcus acidilactici K15 の免疫調節作用

川島 忠臣
キッコーマン株式会社 研究開発本部
下条 直樹
千葉大学予防医学センター
乳酸菌が腸管免疫を介して免疫機能に影響を与えることは広く知られるようになった。またこの20 年で加熱殺菌された乳酸菌がヒトの免疫調節作用に影響を与えることが多く報告されてきた。乳酸菌Pediococcus acidilacticiK15(以下、K15)は樹状細胞に対しIFN-βを強く誘導することで選抜された。ヒト単球由来樹状細胞を用いた評価により、K15菌体内の2 本鎖RNA がIFN-βやIL-12を誘導することが明らかとなった。一方でヒトプラズマサイトイド樹状細胞に対してはIFN-αを強く誘導した。また、乳酸菌は分泌型IgAの産生を誘導することが知られており、ヒト末梢血単核細胞を用いた評価においてK15は強いIgA 産生誘導作用を有することが確認された。実際に187名の3-5歳の幼児を対象とした臨床試験において、K15 摂取群で有意に唾液中総IgA値が高く維持された。K15 の多様な自然免疫の活性化により、感染に対するリスクを軽減する効果が期待できる。
  • Pediococcus acidilactici K15
  • IgA
  • IFN-β
  • IFN-α

腸内細菌叢と免疫

橋詰 直樹
久留米大学医学部 外科学講座小児外科部門
国立研究開発法人国立成育医療研究センター 臓器・運動器病態外科部 外科
田中 芳明
久留米大学医学部 外科学講座小児外科部門
久留米大学病院 医療安全管理部
腸内細菌叢は、新生児期から成人期までに多くの因子に影響を受けながら変動し形成される。腸内細菌叢は、腸管管腔に存在する病原性細胞やウイルスの腸管上皮細胞への結合・進入の防止、病原性細菌から産生される毒素の中和を担う免疫因子として働く。その免疫作用は上皮間リンパ球の分化増殖やIgA 陽性細胞を誘導させることが知られており、腸内細菌叢が宿主の上皮バリアの強化や免疫システムの構築を行う。また病原性微生物との資化物の競合や、短鎖脂肪酸の産生によるpHの低下により、病原性細菌の定着を阻害する。臨床においては、腸内細菌叢の是正を目的としてプロバイオティクス・プレバイオティクスが用いられるが、消化管疾患のみではなく、アレルギー性疾患など免疫システムの異常にもその有効性が報告されている。本稿では腸内細菌叢による免疫機構および臨床におけるプレバイオティクス・プロバイオティクスによる腸内細菌叢における影響をふまえ述べる。
  • 腸内細菌叢
  • 消化管
  • プロバイオティクス
  • プレバイオティクス

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栄養 Vol.36 No.1

「脳と栄養」

  • 髙橋愼一
  • 野坂直久
  • 松永政司
  • 大日向耕作
  • 綾部達宏

脳とグルコース

髙橋愼一
埼玉医科大学国際医療センター 脳神経内科・脳卒中内科(教授)
慶應義塾大学医学部 生理学教室(特任教授)
ヒトの脳機能を支えるエネルギー源はグルコースのみである。成人の脳は体重の約2%を占めるが、全身で消費されるグルコースの約25%を消費する。グルコースは酸素を利用してほぼ100%分解され、その過程で産生されるATPが脳の情報処理機能を支える。グルコースも酸素も脳内に貯蔵はなく、常に脳血流によって供給される。脳の毛細血管はアストロサイトの足突起に包まれており、グルコースの供給を受けやすいのはニューロンよりむしろアストロサイトである。アストロサイトの他方の足突起はニューロンのシナプスを包み込んでおり、ニューロトランスミッターであるグルタミン酸の回収を行うが、同時にATPを消費する。アストロサイトがグルコースを解糖系で分解し得られるATPを利用し、産生された乳酸がニューロンに供与されTCA回路でATPを産生するモデルは完全には立証されていないが、アストロサイトのグルコース消費が、ニューロンの機能維持に重要な役割を果たしている証左が蓄積している。
  • グルコース
  • 酸素
  • 乳酸
  • ニューロン
  • アストロサイト

認知症とMCT

野坂直久
日清オイリオグループ株式会社 中央研究所
認知症、とくにアルツハイマー病(AD)では認知機能やグルコース代謝などの脳機能低下により中核症状や行動・心理症状が生じる。この機能低下や症状の改善が期待される食事成分の一つとして中鎖脂肪酸油(MCT)がある。MCTを摂取すると中鎖脂肪酸やその代謝物であるケトン体が血中に増加し、脳の活動に必要なグルコースの代替エネルギー源として供給されるだけでなく、基礎研究では中鎖脂肪酸やケトン体が神経細胞に作用物質として働くことで脳のグルコース代謝を改善させる可能性が示されている。さらに臨床研究では、疫学研究で中鎖脂肪酸の摂取量増加が日本人健常高齢者の認知機能低下リスクを軽減する報告があり、症例研究でAD罹患者の中核症状や行動・心理症状の改善が観察されており、介入研究で軽度認知障害者に加えAD罹患者の認知機能検査得点の改善が報告されている。
  • アルツハイマー病
  • APOE ε4
  • グルコース代謝
  • 中鎖脂肪酸

脳と核酸栄養

松永政司
NPO法人遺伝子栄養学研究所理事長 工学・医学博士
我々は栄養因子としての核酸の役割に40年間にわたり研究を行い、核酸には様々な生理機能(細胞賦活作用、免疫賦活作用、抗アレルギー作用、腸内フローラの改善作用、脂質代謝の改善作用、鉄の吸収促進作用、記憶力の改善作用など)があることを明らかにした。本稿では特に核酸による脳の健康について焦点を当て他の研究機関のデータを含め概説する。 まずはじめに核酸はヌクレオシドトランスポーターを介してヌクレオシドとして消化吸収され脳に到達することを示す。次いで核酸が神経刺激伝達物としての機能、神経成長因子としての機能、脂質改善作用、記憶力の改善作用などがあることを示す。最後にサケ白子核タンパク(DNA・プロタミン)に中枢神経細胞の遅発性神経細胞死を抑制する効果があることを示す。アルツハイマー病では神経細胞死という病理変化が起こることからサケ白子核酸がアルツハイマー病の予防に一定の効果があることが示唆される。
  • 核酸
  • 記憶
  • ヌクレオチド
  • 神経細胞死

現代病としての認知症
~食による認知機能改善の可能性~

大日向耕作
京都大学大学院 農学系研究科 食品生物科学専攻 食品健康科学講座
綾部達宏
キリンホールディングス株式会社 キリン中央研究所
糖尿病が危険因子であり長寿により顕在化する認知症は現代病ともいえる。脳は、血液脳関門(BBB)が存在し物質の移動が制限され、また、体全体に占める割合が2%であるにも関わらず全エネルギーの1/4を要求する特殊な臓器である一方、疫学調査により糖尿病が認知症の後天的危険因子であることが判明し、脳機能が末梢環境に大きな影響を受けることが明らかとなっている。認知症は、神経変性が進行したステージを改善させるのは容易ではなく予防の重要性が指摘されている。したがって、予防に果たす食品の役割は大きいと考えられ、日々の食事で認知機能低下を予防できれば理想的である。そこで本総説では、高脂肪食摂取により認知機能が低下すること、および、この認知機能低下を予防する可能性がある植物性と動物性の食品素材について焦点をあて紹介する。
  • 認知症
  • 糖尿病
  • ホップ由来苦味成分
  • 牛乳ペプチド

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